■インド・中国が興隆する時代に日本の教育に必要な事
前回「21世紀の新世界へのビジネストリップ」でインドや中国の動き
について書いたら、早速「驚いた」「勉強になった」などいくつかの
反応をいただきました。
そこで今回も、もう少しこの状況を日本と絡めて見て行きたいと思い
ます。
今、世界は21世紀になって20世紀とは全く違う世界になりつつあるの
がわかってきました。それは、前回も触れたインターネットと光ファ
イバー網、Googleなどの検索エンジン、そしてワークフローなどのソ
フトウェア、携帯電話をはじめとするモバイル機器などの発達により
起こって来たことです。
インド人の頭脳は優秀だという事で世界から注目されていますが、こ
れは今、急にはじまったことではありません。国の発展には優秀な頭
脳が必要だという事で、1951年に当時のネール首相がIIT(インド工科
大学)を設立したところに起源を発します。
現在7校あるIITは、入学するには、5,000人の合格者に対して受験者
300,000人と実に60倍の競争率の狭き門をくぐって入学してもそれから
の勉強が苛烈を極めているそうです。
サン・マイクロシステムズの創設者のひとりでIIT卒業生のビノド・
コスラは、「IITに入学するのはハーバードやMITに入学するよりも難
しいだろう。IITデリー校を卒業して、修士号を取るためにカーネギー
・メロンに行ったら、たいして勉強しなくてもいいと思った。IITでの
教育に比べたら、ずいぶんと楽だったから」と言っています。
このように厳しい勉強をしてきた優秀な学生は、その能力をフルに活
かそうとしたら、20世紀までは国を出てアメリカなどに出稼ぎに行か
なければなりませんでした。アメリカの発展は、この恩恵をうけてき
たという側面があります。
全米ベンチャーキャピタル(VC) 協会などがまとめた調査によると、
米VC投資先上場企業の4社に1社が、米国外生まれの起業家が創業した
企業で、業種別ではハイテクの比率が突出しており、VC投資先で米国
外生まれの人物が起業した全上場企業144社のうち創業者の出生地では
インドが32社でトップであることからもうかがえます。
20世紀までは、この優秀な頭脳のうちアメリカに渡ったごく一部の人
とアメリカ人が競っていただけですが、これがインターネットなどの
発展とともに、インドにいながらにして世界のハイテク企業に働く事
ができる様になり、世界中の人が彼らと競わなければならなくなった
ということです。
インドが今の様に注目されるきっかけとなったのがあのY2K、2000年
問題です。コンピューターのプログラムの多くが西暦を下二桁で管理
していたため、2000年になると99から00になり誤作動したりストップ
したりしてしまうのではないかと危惧された問題です。
Y2Kによって、世界中のコンピューターを検査する、すなわちソース
コードを一行ずつ見ていく必要が出た時、アメリカには絶対的に人数
が不足していました。そこで世界のどこかにそれができるエンジニア
がいないか探したところ、作業に必要な人数がインドにいました。そ
して彼らは英語でコミュニケーションができた。はじめは消去法の選
択肢としてインドのエンジニアを使っていたアメリカは、その成果を
見て考えを改めたのです。仕事が速く正確で、コストははるかに安か
ったから。
前回お伝えしたようにアメリカの企業はインドと競争するというスタ
ンスは取っていません。この安くて優秀な頭脳を企業内に取り込み活
用する事で、自社の競争力を高めています。
このような世界になった時、私たち日本人にとって何が必要な事でし
ょうか? 中国人の安い労働力に対抗して安い賃金で働く事でしょう
か? インド人のエンジニアに対抗して安いコストでソフトウェアを
つくることでしょうか?
それとも政府が規制を強めて、中国で作られたものを輸入しない、イ
ンドで作られたソフトウェアを禁止するということでしょうか?
決してそうではないことはもうおわかりですよね。
アメリカ企業がしているように、インド、中国を自分の中に取り込ん
でしまうことでしょう。
取り込むためにはまずコミュニケーションをとる必要があります。
「では、相手に日本語を覚えさせればいいじゃないか。」日本は今ま
でそのようなスタンスでやってきました。でも、インド人にしたら、
自分の英語で欧米の多くの企業で働ける、日本の企業は魅力があるけ
ど日本語を覚えなければいけない、としたらごく一部を除いて欧米企
業で働ける優秀な人材はわざわざ日本企業に来ないでしょうね。欧米
企業で働けない、二流、三流の人間がしょうがないから日本語でも勉
強するか、というのが関の山でしょう。そして中国。中国は、世界の
競争条件が変わった事を十分に認識しています。彼らは今、英語とコ
ンピュータースキルを上げる事に必死になっています。中国では小学
校3年生から英語を学んでいます。そして大学の卒業には、全員、リス
ニング、スピーキングを含めた英語力テストにパスすることを条件と
しています。また、例えば大連では、20万人いる学生に対して、理工
系以外の学生、たとえば歴史を学んでいる学生でも最低1年間コンピュ
ーターサイエンスを学ぶ事を義務づけています。
中国は強烈にインドに追いつく必要性を感じています。全世界に中国
語を話す人間がいるから英語なんか話せなくてもいい、などとは考え
ていません。
教育には時間がかかります。今始めたら来年OKというわけには行きま
せん。日本はまず早急に英語を話せるような教育に改める必要があり
ます。また、そのほかの教科についても今日本で行なわれている教育
は、前時代のものといわざるを得ません。
今やGoogleで検索すれば、全世界から最新の情報を瞬時に探し出す事
ができます。そして、世界は刻々と変化しています。
そのような世界に住んでいるにもかかわらず、娘が中学受験で一生懸
命暗記していたのは、どこの県の特産品がなにか、京浜工業地帯より
も中京工業地帯のほうが規模が大きくどのくらいの額だ、など彼女が
大人になった時には、全く状況が変わっているに違いない事を勉強し
ているのです。あいかわらず暗記に重点が置かれた教育は現在の時代
にマッチしていないのはあきらかです。
もちろん基礎的な事を暗記する事は必要ですが、もっと重要なのは、
何かを解決する時には、どの様に情報を集め、重要なものとそうでな
いものをどの様に見分けるか、そして重要なものを活用してどの様に
考えるのか、考えたらそれをどの様に人に伝えるのか、伝える時には
相手はどの様に考えるのか、それをスムーズに進めるためにはどうし
たらいいのか、などなど「考える力」、「コミュニケーションの力」
とともに、それをできるようにするためのスキルとしての英語力、IT
活用力をつける教育が必要です。
日本人だけで話す場合の「あうんの呼吸」は世界では通用しません。
世界はどんどん進化しています。今週Windows Vista が発売され注
目をされていますが、世界の圧倒的なシェアをにぎり、磐石のように
見られるマイクロソフトも現在大きな脅威にさらされています。
現在ほとんどの方のパソコンに入っているワード、エクセルなどのア
プリケーションソフトを買わなくても同じ事ができる様になるとした
らあなたはどうしますか? 今Googleがそのようなソフトを無料でダ
ウンロードできるようにしています。また、アメリカの企業で自分の
PCにソフトがなくてもサーバー上で必要な作業ができるサービスを開
始しています。
WindowsとおなじOSでは、無料のリナックスが有名で、世界先進国から
発展途上国まで広く使われています。
この、常に進化していかなければいけない世界で、最先端の情報は英
語で世界に伝わっていきます。この情報は今や発展途上国でもPCさえ
あれば容易に手に入れることができます。一方日本では、誰かがその
情報を日本語に翻訳し、それを出版する、ニュースにするなどの作業
が無いと知る事ができません。このタイムラグが日本の競争力を落と
す事につながるのは間違いないことでしょう。
世界から取り残されないように、英語力アップは絶対条件です。
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